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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 衆目を一身に浴びたヴィヴィは、思わず息を飲んだ。



 8月4日(金) 昼前。

 兄妹は1時間 車を走らせ、オックスフォードの屋敷に帰り着いた。

 レンガ造りの2階建て。

 もう1年以上も腰を落ち着けている、ヴィヴィにとっての我が家。

 そこで2人を待っていたのは、両親とクリス、同居人のダリル。

 そして、父方の祖父だった。

「……っ ヴィヴィっ」

 青い玄関扉の前、戸惑った様子で立ち尽くす娘に、一番先に駆け寄ったのは、他でも無い母・ジュリアン。

「無事で、良かった……っ」

 自分と同じくらいの背丈のジュリアン。

 力任せに抱き寄せてくるその身体も声も、細かく震えていた。

 そして気のせいか、

 その身体は、以前にハグされた時よりも、細く感じて。

「……マ……ム……」

「ヴィヴィ……、よおく、顔を見せておくれ」

 妻が抱き締めて、決して離そうとしない娘。

 その肩の上に乗った小さな顔を、傍に寄った父・グレコリーが、まるで壊れ物に触れるように、指を這わす。

「……ダッド……」

 見上げた父の顔は、一見するだけでも寝不足だと判る、憔悴したものだった。

「ご、ごめんなさいっ ――っ わたし……っ」

 自分の事を心底心配し、寝食もまともに取らず、ずっと信じて待ち続けてくれた両親。

 なのに、そんな2人を一番 親不孝な形で裏切ろうとしていた自分に、やっと気付き。

 白い顔がくしゃりと歪む。

「馬鹿……っ お前が謝る事なんて、何一つない! ああ、本当にっ 無事で、良かった……っ」

 咽喉を詰まらせながら心の内を吐露したグレコリーは、妻ごと娘を抱き込んだ

 自分の全身に両親の暖かさを感じていた。

 男女として夫婦として互いに愛し合い、

 自分という個をこの世に産み落とし、

 大切な命を授けてくれた両親。

「……――っ」

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