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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 一人で赤くなり、わたわたしている妹に、

「……軽蔑、する……?」

 そう尋ねて来た兄の言葉が、理解出来なくて。

「へ?」

(軽蔑……って、何を?)

「僕のこと、軽蔑する……?」

 そう言い直したクリスに、

「するわけないっ!!」

 ヴィヴィは咄嗟にそう叫んでいた。

 なのに、目の前の双子の兄は、その心の中を量る様に、灰色の瞳をじいと向けていて。

 両腕をめい一杯伸ばし、クリスを抱き寄せたヴィヴィは、

「……っ する訳無いよぉ~~」

 そう哀しい声を上げ、細い腕に力を込めた。

「ヴィヴィ……」

「……前に、クリス、言ってたでしょ……?」



『……好きになれれば……と思って、付き合ったけど……』



 家族旅行で行ったドバイ。

 そこで、大学に入って付き合い始めた彼女との別れを、告白してきた双子の兄。

 もう心優しいクリスに、そんな事をして自分を責め、苦しみを覚えて欲しくなど無くて。

(そりゃあ、普通の恋愛して、彼女作って幸せになって欲しいとは、願ってるけど……)

「好きな人って、無理して作るものじゃないと思うし……。それに、始まりなんて、どこに転がってるかなんて、分からないじゃない?」

 細い肩に押し付けた金色の頭を撫でながら、とつとつと呟くヴィヴィに、

「え……?」

 クリスは不思議そうな声を上げる。

「その……。か、躰から始まる恋 ってのも、皆無という訳じゃ無い、と思うから……」

 恋愛経験が貧相過ぎるヴィヴィだが、何とか経験則から自分の考えを展開してみる。

 実際、自分と匠海の恋人関係も、躰から始まったと言っても過言では無い。

 ただ、その恋の顛末は、こんな悲惨な結果になってしまったけれど――。

「まあ……そう、かもね……」

 ヴィヴィなりに、考えての結論がそれだったのだが。

 腕の中のクリスの返事は、ちょっと微妙なものだった。

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