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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 1人の男としても、執事としても、責任感の強い朝比奈。

 前任の執事とは会う機会は持てなかったが、それでも「書面での引継ぎを きっちりして下さった」と、前任者は尊敬の念を表わしていた。

 そして その引継ぎの中に “双子宛のファンレターのチェックをするように” との記載は、間違いなくあった筈で。

「えっと……、違う、の。私が「しなくて良い」って、言ったの……」

 前任者を庇う気持ちは さらさら無いが、真実は伝えないと――と、そう弁解すれば。

「それはまた、どうして……」

 全く主の行動に見当がつかないらしい朝比奈は、静かに先を促してくる。

 ちょっと困った風に、大きな瞳を壁一面に配された、背の高い書棚に彷徨わせていたヴィヴィ。

 そしてようやく、薄い唇を開く。

「……あの人は、親日家、だったの。日本の文化や、人が、大好き、で……。「いつか住みたい」って、憧れてて……」

 ぽつりぽつりと、思い出したくもないであろう過去を解き明かしてくる主に、ようやく執事は合点がいったらしい。

「だから、そんな “日本人からの不適切な手紙” を目にし、日本を嫌いになって欲しくなかったのですね?」

 朝比奈の確認に、ヴィヴィはこくりと頷いて俯く。

 双子は日本のみならず、世界の第一線で活躍する、トップアスリート。

 特にフィギュアスケートは、日本では根強い人気があり。

 そして そのファンの中には、狂気と紙一重の手紙を寄越してくる輩もいた。

 もちろん、フィギュアに興味が無く、ただ単に有名で活躍する人間を煙たがる人間も。

 有名税と割り切るには酷い手紙や贈り物が、今までに何度も、双子の手元には届いていた。

 ING(マネジメント会社)に届けられる手紙や贈り物は、そこで金属探知機に通され。
 
 その後、各アスリートへの元へと引き渡される為、そんなに危険は無いと思うのだが。

 たまに、薬品や液体など、金属探知機では確認出来ない代物、

 猥褻な内容や脅迫めいた内容の、手紙等が送られてくる事もあって。

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