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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

「てか、ヴィヴィってば、こんなエロティックな曲で滑るのォ? チャレンジャ~~(笑)」

 茶色の眉毛を跳ね上げ、面白がってくる同居人に、

「ち~が~う~っ! この曲は『カルミナ・ブラーナ』じゃなくって、『カトゥリ・カルミナ』だもんっ」

 ちゃんと違う曲と判っていて、からかってくるダリルに、白い頬を膨らませて見せれば、

「でも、同じ作曲者でショ~?」

 まだ にやあと悪い貌で嗤う親友を、ぎろりと迫力満点に睨み上げたヴィヴィ。

 しかし、瞬時に「ぷはっ」と吹き出す。

「てかっ こんな えっちな歌詞、いったい どんな振付されるっての~~っ?」

「あははっ やだァ~~、ヴィヴィったら変な想像しないでよォ~~」

 爆笑し合った2人は、目に涙を浮かべながら ひとしきりウケ。

「ふふっ ねえ~、ダリル?」

 笑い声のまま、また野菜を洗い始めたヴィヴィに、

「ん~~?」

 型にパイ生地を敷き始めたダリルが、リラックスした声で相槌を打つ。

「もう、いいよ?」

「何が~~?」

「女装。私、大丈夫だから」

 ヴィヴィが元執事に強姦未遂にあってから、ダリルはずっと女装のままだが。

 それまでは “ダリルがそうしたい時” だけ、女装をしていて。

 それは “しない時” と半々くらいの割合だった。

「そ?」

「てか、元々 “ダリル” だったら、大丈夫だもん」

 ダリルと初めて会った時から、ヴィヴィは、

 色分け出来ない彼だけのセクシャリティー かつ 「どんと来い」的な馬鹿デカい包容力 に魅せられていた。
 
 だから、未だ “身内以外の男性” と長時間同席するのが苦痛なヴィヴィでも、

 ダリルが男の恰好だろうが、全く問題無いのだ。



―――――――

※『カルミナ・ブラーナ』『カトゥリ・カルミナ』
 カール・オルフにより作曲された、世俗的なカンタータ(オケ付合唱曲)

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