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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

「はは……」

 乾いた笑いを零したヴィヴィに、振り向いた太一は瞳を細める。

「両親 と 円の産みの両親 は、本当に仲が良かったんだ。それこそ家族のようにね……。だから、父母の気持ちも解らないではないんだけど……」

「本人同士の気持ちが、一番大切ですよね……」

 言葉を継いだヴィヴィに、太一は珍しく脚を組み、続ける。

「そう。だから さすがに後2年もすれば、両親も諦めてくれると思うよ」

「そうですね」

 ヴィヴィはそうなれば良いと思った。

 今ある形を壊そうとすれば、必ず何処かに歪みが生じる。

 身を以てそれらを知ったヴィヴィは、同じ苦しみを大切な2人に味わって欲しくなど無かった。

「太一さん、とっておきのシェリー酒、あるんです……。イケる口ですか……?」

 空気を変えようとしてか、クリスの発したその誘いに、

「うん。もちろん。頂こうかな?」

 大きな笑顔で嬉しそうに頷いた太一。

 ヴィヴィは もうアルコールは要らないので、ハーブティーでも淹れようかと、ソファーを立ち上がる。

 ビーズクッションから立ち上がったクリスも、リビングのボードから、グラスを取り出し。

 どこに隠してあるのか、リビングを後にし “とっておきのシェリー酒” を取りに行く。

(シェリー酒か……。そういえば、飲んだ事無かったな~。一口味見させて貰おう、くひひ)

 スペイン南部を中心に醸造される、酒精強化ワインに興味を持ち、薄い唇を緩ませるヴィヴィ。

 しかし、

「それに、円は……。こんなヘタレな許婚(いいなずけ)なんて、嫌だろうしね……」

 そう自嘲気味に零された呟きは、本人にとっては無自覚だったのか。

「………………?」

 さっと振り向いたヴィヴィに対し「ん? どうしたの?」と、にこやかに尋ねてくる太一に、

「いえ……。何でもないです」

 小さな顔に微笑を張り付かせ、ヴィヴィはダリルと朝比奈のいるキッチンへと引っ込んで行った。







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