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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 スピードアップしていく音楽に乗せ、大きく氷を蹴り、推進力を得て、

『I've always told you I was a rover.
 ―「あたしは遊び人」って いつも言ってたでしょ

 You mustn't knit your brow,
 ―眉をひそめなくてもいいのよ』

 ふわりと持ち上げた左脚、その上で大きく手拍子をすれば。

 会場中からも、大きな手拍子が湧き上がる。

『You should have known by now
 ―あなたにはもう解っているはず

 You'd every cause to doubt me,
 Mein, Herr.
 ―いつも私を疑っていたでしょ
  あたしの恋人』

 上げていた左脚の付け根、小ぶりな お尻をぺちぺち扇子で叩けば、

 チャーミングなその振付に、どっど笑いが起きた。

『Bye-bye, mein Lieber Herr,
 ―さよなら、あたしの愛する男

 (以下ドイツ語)
 Auf wiedersehen, mein Herr.
 ―またね、あたしの愛する男

 Es war sehr gut, mein Herr
 ―とても良かったわ、あたしの愛する男

 Und vorbei.
 ―だけど もうおしまい』

 風を肩で切り、氷の上を粋がって歩き、

『Du kennst mich wohl, mein Herr,
 ―あなたは たぶん あたしを知ってる
  あたしの愛する男

 Ach, lebe wohl, mein Herr.
 ―ええ、おそらく生涯ね
  あたしの愛する男』

 元来た道を引き返す その後ろ姿は、

 まるでペンギンが “ぴょんこぴょんこ” 跳ねる様な、コミカルなそれ。

『Du sollst mich nicht mehr sehen,
 ―あたしに もう会うべきじゃないわ

 Mein Herr.
 ―あたしの愛する男』
 
 そうしてリンクの中央、

 賑やかな曲に合わせ「右・左」と辺りを確認し、

 まるでタカラジェンヌの如き大げさな身振りで、くるりとターンしたヴィヴィ。
 
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