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第6章 　　 　

　
『Bye-bye, mein Lieber
　―さよなら、あたしの男』

　伸びやかな歌声に乗せ、その場で大きく両腕を振り「バイバイ」し。

『Bye-bye, mein Lieber Herr
　―さよなら、あたしの愛する男』

　賑やかなコーラスに乗せ、氷の上を走り出す。

『Herr...
　―あなた……』

『Auf weidersehen,
　Mein Herr.
　―またね、あたしの愛する男

　Es war sehr gut,
　―とても良かったわ

　Und Vorbei.
　―だけどもうおしまい』
　
　頭上には、両手で握った扇子。

　そのままくるくると、小刻みなステップで旋回して進み。

『Mein Herr
　―あたしの愛する男

　Und vorbei.
　―だけどもうおしまい』
　
　今度はそのまま、ツイズル（滑りながら回転し移動）でリンクを大きく使っていく。

『Du kennst
　―知ってるわ

　Mich wohl,
　―おそらく　あたし　

　Du kennst mich,
　―あなたも　あたしを知ってる

　Wohl, mein Herr,
　―多分ね　あたしの愛する男』
　
　フライングからウィンドミルスピン（風車の様に上体とフリーレッグを旋回）へ。

『Mein Herr...
　―あなた……

　Ach, lebe
　―ああ、人生』
　
　軸足を換え、赤い扇子を開いた状態で、ドーナツスピンへと移行し。

『Wohl, mein Herr.
　―たぶん　あたしの男

　Du sollst mich
　―あたし　するわ』

　そして締め括りは、高速のアップライトスピン（直立のスピン）。

『Nicht mehr Sehen,
　―もう　あたし

　　“あなたを　見ない”　

　And bye-bye！
　―そして　バイバイ！』
　
　コーラスとライザ・ミネリの力強い歌声を追っ掛け、リンクを駆け回り。

　そうして、

　バンドの最後の音と共に、両腕を高々と広げてフィニッシュすれば、

　スポットライトを煌々と浴びるスケーターには、盛大な拍手と歓声が贈られた。