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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 9月2日(土) 早朝5時。

 ベッドサイドの仄かな明かりだけが灯された、ホテルの一室。

 ぱっちり大きな瞳を見開いたヴィヴィは、

「くぁwせdrftgyふじこlp~~っっ!!」

 昨日の早朝と同様、シングルベッドの中で悶絶していた。



 あ゛あ゛っ もう何なんだ~~~っ!!

 何が悲しくて、連日エロい夢なんか視なきゃいけないんだっ

 しかも、2回ともイイところで終わりやがって。

 どうせなら、最期まで――っ!

 ――って、あわわわわっ
 
 えっと、そ、そうじゃなくて……っ!!



 口汚い言葉で、思わず本音を、脳内で喚きそうになったヴィヴィ。

 同室の英国人アイス・ダンサーを起こさぬよう、もぞもぞベッドから這い出ると。

 バスルームで手早く洗顔・歯磨きを済ませ、

 スポーツウェアに身を包み、こそこそ部屋を後にした。



 20歳の誕生日に渡英してから、匠海に再開する迄の1年3ヶ月。

 女の生理現象として、どうしても躰が疼く日。

 ヴィヴィはあらゆる手段で、その欲求を抑え込んできた。

 そうして、試行錯誤の末に生み出したのが、下記の方法――

 “とにかく、飲む! 走り込む!! 泳ぎまくるっ!!!”
 
 ――ちなみに “飲む” とは牛乳の事である。

(うしっ 朝食で牛乳 一気飲みしよう!)

 そう心に決めたヴィヴィは、エレベーターで地上階まで降りると、

 ホテルのドアマンと朝の挨拶を交わし。

 駐車場の隅で入念に準備運動をすると、ホテルの周りを “走り込む” 事にした。

 ちなみに、エディンバラの9月頭の 最低気温10℃ 最高気温17℃。

 かなり寒い。

 夜明け前の群青色の空の下、20分ほど軽くジョギングし身体を温めていると、

 ちらほら現れ始めた、地元のランナーと行き交って。

 そして更に10分程すると、クリスとアルフレッド 渋谷、

 そしてデニス・ヴァシリエフが、ホテルの外門から出て来るのに鉢合わせした。

「おっはよ~。寒いねえ~」

 白い息を吐きながら、能天気に挨拶するヴィヴィに、

 「早いな~ヴィヴィ、おはよう」と、アルフレッドが。
 
 「ヴィヴィ、鼻ピンク……。可愛い……」と、クリスが。

 「おはよう、ヴィヴィ」と、デニスが。

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