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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

 20歳の誕生日に松濤の屋敷を出て、

 それから1年3ヶ月後に再開した匠海は、自分を妹として扱った。

 そうか――。

 あの思い出したくも無い忌まわしい出来事さえなければ、

 自分達はきっと “兄” と “妹” として、その後の人生を送っていた。

 けれど、そうはならなくて――。

 自分を助けるために、無理やり抱いた匠海。

 そして、生きる気力を何とか取り戻した妹に、

 兄は自ら手を出してくる事は無かった。

 “妹” として接し、 

 “妹” として構い、

 “妹” として慈しんでくれた。
 
 なのに、
 
 それに勝手に苛立ちを覚えた自分が、

 自ら兄を――



「………………」

(結局……昔も今も “私” がお兄ちゃんを、求めてるだけ……)

 ようやく緩められた抱擁に、虚しさを覚えたまま、兄の腕から抜け出そうと身体を背けたヴィヴィ。

 しかし、

「ちょっ な、何……!?」

 またもや驚きの声を上げたヴィヴィは、今度は背後から匠海に抱きすくめられていた。

「ん~~? 今度は “ヴィクトリア” へのハグ」

 先程までとは180度違う、匠海の甘えた声音。

 両肩と腰に、しっかり両腕を巻き付けられれば、

 背中全体に、兄の逞しい体躯と暖かな体温が、しっかりと感じられ。

「……――っ 離してっ!」

 思わず細い声で叫んでいた。



 だって。

 だって……、

 お兄ちゃんは、いらないんでしょう? 

 “妹” でない私なんて、

 もう、いらないんでしょう?



「離すか。俺、ずっと我慢してたんだけど?」

 むすっとした声で返してきた兄に、

「…………何、を?」

 そう、促せば。

「 “意識のあるヴィクトリアに触れる” のを、に決まってるだろうがっ」

 何故か語尾を荒げて言い募ってくる。

「つまり “意識のない私に触れる” 事はしていたと?」

「……バレたか」

 昨夜、泥酔の末 爆睡していた自分は、一体どれほどこの男に触りまくられたのだろうか。

(……うん。考えないほうがいいな……)

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