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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章       

「おや……。ありがとう、匠斗……」

 抱えていたチェロを床に置いたクリスが、そう礼を言いながら椅子から立ち上がり。

 執事から甥っこを預かると “高い高い” を始める。

「ふう……。結構、サマになったよね~。そろそろ新しい曲にする?」

 テーブルに楽器を置いたヴィヴィは、五十嵐が紅茶を淹れてくれているソファーへと移動する。

「そうだね……。ヴィヴィも、やりたいの探しておいて……?」

 匠斗を抱っこしながら、隣のソファーに腰を下ろしたクリスに、ヴィヴィはにっこりと笑う。

「解かった~。わ~、何しようかな~?」

(ピアソラもいいし、ショスタコビッチなんかも、捨てがたい。むむむ……)

 暖かなティーカップを細い両手で包み、にまにまし始めたヴィヴィに、

 紅茶を淹れ終えた五十嵐が、柔らかな声で口を開いた。

「私は音楽に造詣は深くないのですが。お2人の演奏は “音遊び” といいますか、追い駆けっこをして遊んでらした、幼少の頃が思い起こされて、とても好きです」

 兄の執事からの称賛の声に、双子は揃って礼を述べた。

「特に、パッサカリアは、2人でどんどん変奏を重ねていくのが、凄く楽しいの!」

 ヴィヴィが面白そうに五十嵐に説明すれば、

「確かに……。この曲の、ユニゾンの難易度の高さ……。双子ならではの息の合いやすさ、は重要かもね……」

 クリスも こくこく頷きながら、そう同調する。

 そして、その腕の中、じ~~と叔父を見上げていた匠斗も、

 こくこく。

 細い黒髪が愛らしい、丸っこい頭を振って真似し――

 それを見ていた大人3人に、

「きゃあ、可愛いっ♡」

「匠斗、もう一回「うんうん」して……?」

「はあ、何てお可愛らしいのでしょう」

 そう賑やかに騒がれたのだった。





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