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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章       

 祝日のディナーの席を、両親・匠海・匠斗・双子で囲み。(瞳子はお仕事)

 息子を風呂に入れ、寝かせ付けた匠海は、真っ直ぐに妹の元へとやって来た。

「荷物の整理は済んだか?」

 明日、朝の便で英国へ戻る手筈を問うてくる兄に、渡航準備も就寝準備も万端なヴィヴィは、こくりと頷き。

 誘われるがまま、晩酌に付き合う事になった。

 兄のリビング。

 黒革のL字ソファーに腰を降ろし、細長いシャンパングラスを手に取った。

 その数分後。

 ヴィヴィの両脚の先は、何故か、匠海の手の中にあった。

「ふふっ く、くすぐったいよ~~っ」

「あ、こら。動くな」

 クッションを抱き締め、くすぐったさに耐える妹。

 そんな妹の足の爪に、至極真面目にペディキュアを施している兄。

 9月頭――ロンドンのホテルで、確かに匠海は下記を口にしていた。



『綺麗な手だ。食べてしまいたい』

『や、やめて下さいっ』

『今度、マニキュア塗らせてくれ』

『は?』

『ヴィクトリアの白くて細い指には、薄ピンクかな? きっと可愛いぞ』

『……兄にマニキュアなんか塗らせる妹が、どこにいるっての?』

『ここに』



 その言葉を、有言実行とばかりに行う目の前の兄は、何だかとても愉しそうだ。

「今度は、両手を塗ってあげようね」

 そう囁きながら、華奢な身体をすっぽり横抱きした匠海は、手早く爪を研ぎ。

「な……何で、上手いの?」

 ヴィヴィがそう驚くほど、手際良くネイルを塗り始めた。

「うん? ああ、ネットでやり方を調べたし。それに俺、天才型だから」

「……はい……?」

「少しやれば、すぐにコツや効率性を見い出せる」

 しれっと己の有能さを自慢した匠海に、

「…………けっ」

 そんな可愛くない声を上げ、鼻白んだヴィヴィ。

 半分残っていた黄金色の酒を、ぐいっと一気に煽る。


―――――
※ちなみに使用しているのは、Nutra Nail Gel Perfect UV-FREEっす。
 UV照射せず、ジェルネイルぽい仕上がり。日本未発売かも。
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