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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章       

 10月10日(火)。

 羽田発8:50の飛行機に乗った双子は、同日の13:15にロンドンに到着し。

 12時間半の移動をもろともせず、一足先に戻っていたコーチ陣の元、夜の練習に励んだ。





『いよいよ、来週からか』

 23:30。

 オックスフォードの屋敷の2階。

 ベッドヘッドに凭れ掛かったヴィヴィは、iPadへ向け にっこり微笑んでいた。

「うん。考えるだけでも興奮する~~っ」

 来週の月曜日から、とうとうヴィヴィの大学生活が再開する。

 10月16日(月)~12月10日(日)までの8週間。

 スケート以外にも、打ち込める物が出来る事。

 教官や周りの学生達と、切磋琢磨し高め合える事。

 東大を去ってからの この1年半。

 ヴィヴィが求めていた事が、やっと現実になるのだ。

『はは。お前の事だから、全部を全部 頑張り過ぎちゃうんじゃないかと、ちょっと心配だよ』

 Skypeの通話相手――匠海は、落ち着かせようとしてくるも、

「え~? 大丈夫。私、丈夫だから」

 俄然やる気の妹は、聞く耳持たずの状態だった。

『時差ボケ、大丈夫か?』

 日本時間だともう、明日の朝7:30という時間。

 時差8時間の影響を心配してくれる兄に、ヴィヴィは金の頭を横に振る。

「大丈夫。飛行機で爆睡してたも~ん」

 約12時間、死んだように眠りこけていたヴィヴィは、食事の時間だけはクリスに起こされ。

 何とか夢うつつで食事を摂り――また爆睡、を繰り返していた。

『ふうん? 何でそんなに、眠かったんだい?』

 画面の向こう。

 びしっとスーツを着こなした兄が、不思議そうに顎に指を添わせ、尋ねてくる。

「な……っ だ、だって、お……、おにぃちゃんがぁっ!!」

 いきなり赤面し、ベッドの上であたふたし始めた妹に、兄はくっくっくっと、面白そうに笑っていた。

(だってぇ~~、お兄ちゃん、昨日、全然 離してくれなくて……っ)

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