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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

 脅迫し、わざわざ葉山くんだりまで妹を拉致し。

 かといって、当初の目的である筈の「話」を切り出す事も無く。

 「先に寝るといい」と油断させておきながら、ちゃっかり同室で熟睡してやがる。

 これがもし、風呂から上がった匠海が寝ていたヴィヴィに襲い掛かり手籠めにしたのだとしたら、まだ解かる。



「ああ、これからの自分の人生は兄の言いなりで。飽きて捨てられるまで搾取され続けるのか」



 そう、己の置かれた立場を理解できたろう。

 納得は出来なくとも――


 だが現実は同じベッドで寝る事も無く、更には隣のベッドで寝ていたのだ。

(てか、それだったら他の部屋で寝ろっての! 人の安眠を妨害しやがってぇ~~っ!!!)

 どんどん心の声が汚いものになっていくのを、今の自分では止められそうもなかった。

 イライラ・モヤモヤ・ウツウツ。

 精神的にも肉体的にも、そして美容的にも悪い影響しか及ぼさぬであろう不の感情を、しばらく身の内で持て余していると。

 いつの間にか目の前の水平線が、白み始めていた。

 4月半ば、春めいてきた最近は日の出が5:15あたりらしい。

 見る間に海面が太陽の光に染め上げられていく光景は、一種神々しささえ感じられ。

 しばらくその光景にぽけ~~と放心していたヴィヴィは、胡坐の状態からのろのろ立ち上がると、

 何かを探す様にその辺を徘徊しだした。

 目的のものはリビングの壁沿いにすぐに見つかった。

 1週間分の荷物を詰め込んだスーツケースと、ボストンバッグ。

 ほっと緩んだ、寝起きの白い頬。

 しかしバッグの上に置かれたものを目にした途端、灰色の瞳は大きく見開かれ、雪の如き清らかな頬は見る間に熱を持っていく。

「……~~~っっ」

 思わず駆け寄り胸に抱え込んだのは、折り目正しく畳まれた洗濯物。

 それは夜に風呂に入る前に全自動洗濯機に放り込んだまま失念していた、己の衣類だった。

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