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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

 ゆっくり湯を使いバスルームを出たヴィヴィは咽喉を潤すため、しょうがなくキッチンへ向かったのだが。

 ダイニングとリビングに続くそこに足を踏み入れた途端、細く高い鼻は旨そうな匂いを敏感に嗅ぎ取っていた。

 炙った海苔の香ばしい香り。

 炊き立てご飯の湯気。

 そして極めつけは、恐らく魚介類で出汁を取った味噌汁の香り。

 乾いた咽喉を潤す為ではなく、じゅわっと唾液を分泌させたその “THE 日本の朝ごはん” の香りに、

 細く白い咽喉が勝手に「ごくり」と鳴った――だけなら良かった。

 妹の気配に気付き、キッチンから顔を覗かせた兄の目の前、

 バスローブを纏った薄い腹からは「くぅ~~」と、子犬の鳴き声の如き情けない音が漏れてしまった。

「ああ、上がったのか。ちょうど用意出来たところだよ」

 木製トレイに味噌汁の椀を乗せた匠海は、手際良くダイニングテーブルへの配膳を済ませ。

「ほら、座って」

 そう促しつつ わざわざ椅子を引いてくれた兄にも、妹は無言を貫いた。

「ヴィヴィ? どうした? 温かい内に一緒に食べよう?」

 ダイニングにいる匠海に背を向けたままのヴィヴィに、再び催促の声が掛かったが、

「……いらぬ……」

 何故か武士言葉で兄の誘惑を振り切った妹は、当初の目的通り冷蔵庫へと足を向ける。

 もうこの際、牛乳かジュースで腹を膨らまし、パンでも齧っていれば空腹も紛れるだろう。

「「いらぬ」って……」

「施しは受けぬ……。食糧ぐらい己で調達するわい」



 兵糧攻めにも、餌付けにも屈せぬぞ!

 そうだ、わらわは日持ちする乾パンを所望する~~っ 

 乾パンっ! 

 誰か乾パンをもてぇ~~い!!


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