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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

「ん゛な゛……っ!? にゃっ なんじゃこりゃ~~っ!!!!」

 紙袋とワンピを放り出し、焦って己の後ろ姿を鏡で確認していると、

 痺れを切らしたのか、こちらへ向かってくる足音が近付いてくる。

「お~~い、いつになったら着替えられるんだ~~?」

 扉越し、若干 間延びした匠海の呼びかけに返されたのは、慌てふためいた喚き声。

「う゛……っ うるさいもんっ!」

「可愛いだろう、それ。気に入ってくれた?」

「……――っ 変態っ」

 含み笑いを寄越す兄に、妹は脱衣所の隅まで後ずさりつつ負け犬の遠吠えをかます。

「変態? どこが? 心外だなあ。今回は普通の服だろう?」

「……~~っ」


 普通の服? これのどこが!?

 ていうか、語尾が笑ってるでしょうがっ!


「ほら、出て来てヴィヴィの可愛らしい姿見せて?」

 勝者である筈の匠海が、そう猫撫で声で諭してくるが、

 壁にもたれ掛かっていたヴィヴィはというと「やなこった」と即座に跳ね除け、そのままズルズルとその場に座り込んだ。


 こんな馬鹿ウサギみたいな格好、出来るかっての!

 もうやめだ、やめだ。

 こんな茶番に付き合う義理は、今の自分には無い。

 籠城してやる――

 このまま月曜日の早朝までここに閉じ籠っていれば、

 さすがの兄も出勤せねばならぬだろうから、溜飲を下げて解放してくれるだろう。


 そんなデジャブ感満載の決意を固め、抗議の座り込みと決め込んだヴィヴィだったが、

 0勝7敗の癖に義務を放棄した妹に、勝者の兄は容赦無かった。

「ヴィヴィ、早く出て来ないと鍵開けるぞ?」

「………………?」

「俺、この別荘中の鍵のありか、知ってるんだけど?」

「………………」

 昨夜、施錠した筈のベッドルームに、兄に易々と入室を許してしまったというのに。

 実は、世界に名だたる名門大学 “オックスフォードに在籍する才女”――という肩書は嘘っぱちで、

 本当は “三歩で忘れる鳥頭” だったのか?

 と、自分のうっかり加減を罵りたくなった。

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