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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
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「……見るな」
「嫌だ。俺の事は空気だと思って」
昨日までと変わらず憮然と反抗する妹にも、兄はへこたれる気配も無く、
長過ぎる脚を組み ふんぞり返ってしまった。
「………………」
どうせそこに座るのならば、ピアノ伴奏でもしてくれればいいのに。
というか、そんな存在感たっぷりの空気なんて、邪魔で邪魔で仕方がない。
据わった眼差しで じろりと睨み付けても、受け止める方の匠海は「演奏するよりも観ていたい」とでも言わんばかりで。
しばらく両者は無言で対峙していたが、先に音を上げたのは それさえも面倒臭くなった妹の方だった。
無意識に張り詰めてしまっていた全身の気を解く様に「はぁ……」と大きく息を吐き。
先程 失敗してしまったデベロッペからのアチチュードを、納得するまで繰り返す。
コンクール等で踊られることの多い、バレエ『サタネラ』
そのストーリーには関係無く、明るく 時には挑発的にテクニックを見せるバリエーションとして披露される。
だというのに、数分前までは浮かんでいた愛らしい笑みは、とうに引っ込み。
無表情のままアン・オー(両腕で頭上に0を描く)保持し、両のトウで立ち上がった。
そんなシンプルな立ち姿だと如実に露わになるのが、膝から下がしなり脚全体がS字カーブを描いた、
いわゆる「甲が出ている」美しいバレリーナの脚。
そこからステップを挟み、折り畳んだ片脚をゆっくりと頭上へ引き上げるデベロッペを繰り返し、
その締め括りには、手先にアクセントをつけたアチチュード。
こましゃくれた少女の様にツンと顎を持ち上げれば、自然と身体が上に持ち上がり、グラつく事も無くポーズが決まった。
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