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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        

「だから、ピル。国別終わってから、飲んでないから、ええと……」

 そう告げながら指折り日を数えたヴィヴィは、うんと頷く。

「ちょうど1週間、飲んでないや」

「………………」

「なのに、お兄ちゃんってば、あんなに……」

 拗ねた口調で唇を尖らせ、上目使いで見上げつつ、

「ふふ、どうしよう。デキちゃったら」

 そんな恐ろしい台詞を嬉々として続けながら、バスローブのお腹を勿体ぶって撫でさする。


 逃げればいい

 自分から「大丈夫だから」と誘っておきながら

 脅しを掛ける毒女からなんか

 もう逃げてしまえばいい

 否

 もう、本当に逃げて――


 顔では無邪気に微笑みつつ、胸の中ではひたすら嘆願していたヴィヴィ。

 しかし、

「産んでくれ」

 一切の迷い無く即答した匠海に、小さな顔からは瞬時に偽物の笑みが剥がれ落ちる。


『産んでくれ』――?

 私に?

 この私に

 妹である自分に

 貴方の子供を『産んでくれ』って――?


「……なに、言って――」

 正常な思考を以て出された答えとは思えぬ匠海の返事に、ひるんだヴィヴィが一歩後ずさるが、

 すぐに間合いを詰められ、ローブの上から両腕を掴まれた。

「お前が育てる気がないなら、俺の手で責任もって育てるから。だから!」

「……最低……っ」


 どうしてそんな事を軽々しく口に出来るのか。

 この男は、4ヶ月前の自分がどんな気持ちで、

 2度目の別れを切り出したと思っているのか。



 いや――

 本当に最低なのは、

 こんな “見え透いた嘘を吐く自分” だ。


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