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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        

 もう何もかもが嫌で、悔しくて、哀しくて。

 兄から顔を背け、ぐっと目蓋を閉じ視界を遮断した。

 次の瞬間、

「……え……!?」

 そう戸惑いの声を上げたヴィヴィ。

 両脚にかかる重力が無くなった――そう思い目蓋を開ければ、

 何故か自分は兄の肩に担ぎ上げられていた。

 大股でダイニングからキッチンへと移動した男は、

 常なら絶対にしないであろう乱暴さで、肩の上の華奢な躰をソファーへ放り。

「……ちょっ!? も……だめ……っ」

 逃げる隙を与えず伸し掛かってきた匠海に、両腕を振り上げ必死に押し返すも、全く歯が立たなかった。

「ヴィクトリア……っ ヴィクトリアっ!!」

 我を忘れ、盲目に妹を求めてくる兄。

「ぉにぃちゃ……っ 待ってっ 嫌ぁ……っ!!!」

 バスローブの裾から捻じ込まれた掌に、本気で恐怖を覚えたヴィヴィが必死に喚いた、その頭の傍。

 ボスッと鋭い音を立て、振り下ろされた片方の拳。

 それはきつく握り込まれ、憤怒を握り潰さんとばかりに震えていた。

「何でっ! どうして “妹” なんだっ!!」

「……――っ」

 こんなに無防備に喚き心を曝け出す匠海を、見た事など無かった。

 蛇に睨まれた蛙状態で凍り付くヴィヴィの頬を、震えを帯びた大きな掌が恐々と包み込んでくる。

「こんなに……、こんなにも、お前だけを愛しているのに――っ」

 血走った切れ長の瞳が、徐々に潤みを帯びていた。

 これ以上 醜態を晒したくないのか、膨らみの少ない胸の上に救いを乞う様に埋められた男の顔。

「………………」



 どうして

 どうして “貴方が” 

 そんな傷付いた顔をするのだ

 私を散々振り回し

 弄び捨てたのは貴方なのに



 今にも泣き出しそうな兄の表情に

 受け止めた胸だけでなく、全身が締め付けられて

 もう何も言えなくなる



 絡め獲り

 巻き込み

 引き擦り込もうとする 

 運命の歯車から


 逃れられず

 足を取られ


 私は また

 結局 何も出来ずに

 元いた場所へと連れ戻されるのだろうか――?






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