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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        

 続けて、ヴィヴィが己の選択を述べた言葉は次の通り――


「幼少の頃から日本の地で生活を送りつつ、英国式の教育と家庭での愛情を受けてきた自分は、どちらの国にも馴染まない歪な存在なのかも知れません。

 ただ本人は、それが自分のアイデンティティーであると受け止め、日英両国にルーツを持つ自分を誇らしく思っています。

 この度の決断は決して易くは無かった。

 それは “スケートだけ” が私の人生では無いからです。

 今、英国の地で多くを学んでいる身としては、苦渋の決断でもありました。

 そんな中で、自分で決断出来た事には自信を持ちたい。

 私は、日本代表として2026年の五輪出場を目指します。

 ただ、もう自分に課せられた使命は、日本という国単独に限られたものではないと思っています。

 シニアに上がる頃、母は私達に言いました「客寄せパンダになれ」と。

 正直ずっと嫌でした。

 私は私個人なのに、どうしてそこまで背負わねばならぬのかと――

 ただ、シニアに上がって戦い続ける中、見えて来るものもありました。

 人の心を打つスケートというのは例え国籍が違えど、言語を同じくしなくとも、万人に響き共有出来る素晴らしいもの。

 これまで各国のスケーターと行動を共にし、自分はそれを痛感させられた。

 よって私の今の目標は、日英だけでなく、世界各国のまだフィギュアを見知らぬ人々にも、自分の演技で何かしらの刺激を感じ取って貰える。

 そんなスケーターに、そして多種多様な価値観を持った人間になることです」


 双子が会見の席で述べた言葉は、1文字違わず新聞やネットに載せられ、繰り返しニュースや情報番組で取り上げられ。

 その内容は、大多数の人々の賛同を得るに至った。




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