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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章     

「まあいいや。それで、最近どう?」

 諦めた様子で、勝手に目の前のソファーに腰を下ろすフィリップ。

「どうって?」

「彼氏だよ、彼氏。まだ続いてるの?」

 直球な質問を寄越す相手に、その鮮やかな青い瞳を見返したヴィヴィ。

 しかしその脳裏に過ぎったのは、目の前の男の事ではなかった。


 先週末、酔った勢いで着信拒否を解除してしまった匠海から、その1時間後には電話がかかってきて。

 たった2週間しか離れていないのに、心底嬉しそうだった兄の声。


 しかし匠海は、もう自分の恋人でもなければ愛人でもない。


「……ううん」

「え!? 「ううん」ってことは彼氏とは終わったのか? よしよし。じゃあ、次は俺にしなさい、是非そうしなさい」

「……なんで、命令形……」

 ソファーから身を乗り出さんばかりの勢いのフィリップを、見やるヴィヴィの瞳はあくまでもツレナイ。

「ていうか……“彼氏” はいなくなったけど “セフレ” が出来たの。よって男性に不自由はしてない。そして今は真面目にお付き合いしてられる余裕も無い」

 ピシャリと相手の要求を却下したヴィヴィは「もうこの話題は終わり」とばかりに立ち上がろうとしたが、

「は? セフレ……? って、ヴィーにっ!?」

 彫りの深い瞳を見開いたフィリップは、唖然とした表情を浮かべていた。

「そうよ、幻滅したでしょ?」

 持ち上げかけていた腰をボスンと元ある位置へ落としたヴィヴィは、どうでも良さそうに続ける。

(ふんだ。こんな童顔な女でも22歳ともなれば、穢れきってるんだぞ。いい加減に諦めんかい)

 実年齢よりも幼く見られ、2人も兄がいるのに何故か「男に免疫無さそう」と揶揄されるヴィヴィを、

 大半の人間は「処女に違いない」と思い込んでいるらしいが。

 実際のところは齢22にして男女の酸いも甘いも噛み分けざるを得なかったヴィヴィは、若干やさぐれていた。

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