パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第16章 　　　　

クラリネットを主とする木管楽器が奈落の底へと引き摺り下ろそうとする中、それでも凛と居住まいを正したヴィヴィは、薄氷の上に坐し。

右に持った扇を膝の前に据える、フリ。

そして、右手を戻す際に裾を直す仕草をすると、両の手を膝前の氷に添えすっと正面を向き、襟元が見えぬ程度に深々とお辞儀をした。

硬質なティンパニの余韻がはびこるリンク。

その中央で礼を尽くす演者に圧倒されていた観客は、それでも前代未聞ともいえるプログラムにガタガタと席を立ち。

そうして、ようやく場内を蝕む様に支配していた異様な空気は、何とか霧散したのだった。