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ひよこと野獣
第13章 野獣 武志のけじめ
「お父さん!!」

俺の頬を一発叩いた父親を、陽菜が抗議するように見上げた。

「陽菜、お前は口を挟むんじゃない」

だけど父親のただならぬ雰囲気と言い方に口をつぐんで涙を溢れさせる。

平手一発で済むんなら安すぎる。
できることならもっとボコボコにしてほしいくらいだ。

まだ16歳の娘が同意の上とはいえセックスしてて、しかもゴムをつけずにやっちゃいましたとなれば心が穏やかでいられるはずがない。
俺に娘はいないけど想像しただけでもイラッとするくらいだ。
現実に起こったらそれこそ相手を殴り続けるに違いない。

「…別れてほしい…って言ったらどうする?」

陽菜の父親が静かに口を開いた。

そう言われるのも覚悟していた。
どこのどんな奴かもわからない男に娘を奪われたんだから、そうなるのも無理はない。
だけど……

「本当にすみません!……ですが、それだけはできません!」

これだけは諦められなかった。
理由なんて分からない。
ここが好き、とか決定的な何かがあるわけじゃない。
けど陽菜を失いたくない。
これだけは本当だった。


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