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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第2章 コンビニはどこですか
 最後の記憶は裏路地だ。

 汚いビル群もゴミ箱も、ゴミを荒らすまるまる太ったカラスもいない。


 上は灼熱の太陽がぎらぎら照りつける蒼穹。

 下はじりじりと蒸し焼きにするかのような熱砂。


 「…………」


 ぱたり。

 現実逃避でその場に倒れ込んだあたしは、頬に触れた砂の熱さに飛び起きた。


「これは、もしや……夢から覚めた夢という奴では!?」


 ぺしぺしと自分の頬を叩いて見ても、痛さがきちんと返ってきて目が涙で滲む。


「夢じゃない……?」


 これが夢ではないというのなら、一体なにがあたしの身に起きたのだろう。

 意識無くした間に、あたしは拉致されたのだろうか。

 誰に?

 クルックゥか? 奴があたしをぶら下げて、よたよた飛んできたのか?


「日本の砂漠と言えば……」


 トリさながら、恐らくは鳥取砂丘と思われる場所に――。

 自虐的なダジャレなのか、クルックゥ。

 それで満足なのか、クルックゥ。


 ああ、トリ頭の奴のことはどうでもいい。
 

 うん、多分此処は鳥取県。

 東京からどれほど離れているのか見当はつかないが、許すまじ誘拐犯の影は見えない。

 だだっ広い砂漠に、あたしだけがぽつん……。

 放置プレイを食らっているらしい。


 この異常事態に依然パニックは続いているけれど、ここが鳥取県だと思えばなんとか心が落ち着いた。経緯はわからないなりにも、携帯が使えると思えば。

 そう、あたしの手には携帯がある。

 助けを呼ぼう。


「!?」


 だが僅か数秒後、希望は木っ端微塵に打ち砕かれた。


「圏外ってなに!? 鳥取県は電波が通じないの!?」


 しかも、おかしなサイトに接続し続けていたためだろう、画面中央に充電を促すマークが出てくると、ぴーぴー耳障りな音をたてて、画面は暗くなってしまった。


 役に立たない連絡手段。

 どうするんだ、あたし。
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