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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第3章 売られました

 
「ぶへっくしょん」


 立ちこめる冷気に、盛大なくしゃみが出てしまった。

 自分自身を抱きしめるようにして暖を取りながら、あたりを見渡してみれば、さきほどまでの白の色彩は澱んだような汚色へと変色していた。

 冷気とともに、饐えた臭いが漂う。

 白い世界でもなければ、あの灼熱の砂漠世界ではない。


 ここはどこだろう。

 またクルックゥの幻術の中にいるのだろうか。

 奴の幻影威力は、ここが現実かどうかもわからぬほどに、判断力すら奪うすごいものなのか。



 ぴちょんという水滴が落ちる音が、やけに響いて聞こえる。

 どこかの地下にいるような気がする。

 どうしてあたしは、いつも肝心な移動中に気を失っているのだろう。

 目覚めていれば、簡単にここまで運ばれることはなかった。


 点だけを見せつけられて、それを繋ぐ線がまた見えない。

 またクルックゥが、あたしをぶら下げて飛んでここに放ったのだろうか。

 廃棄場に捨てるゴミのごとく。


 ……ゴミ、ねぇ?


「ひとをゴミ扱いか……」


 青筋浮き上がらせたあたしは、指をばきばきと鳴らす。


 随分と恩着せがましいことを言っていたように思うが、場合によっては焼き鳥どころの話じゃなくなるかもしれない。


 ミンチか、ハンバーグか。



 視界が暗闇に慣れてきて、この場所の全貌が見えてくる。


 汚らしい石壁。


 目の前にあるのは……頑丈な鉄格子。

 鉄格子に絡んでいるのは大きい鍵、南京錠という奴だ。



 …………。



「なんであたし監獄に入れられているのよっ!!

ちょっと、誰か、誰か~っ!!」



 鳥取砂丘の次にいたのは、冷たく汚い……地下牢でした。



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