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あたかも普通の恋愛小説
第12章 奈落、注意報
しばらく私の目を見てそらさないでいた井藤くんは、やがて息を吐いた。何かを考え、結論をだしたかあるいは決心か。
おもむろに開く口は、いつもと同じ口調でも、そこにある重さは違った。
「おK。聞く覚悟があるなら話す。――理由は2つある」
そこからはもう目もあわさず独り言みたいに言う。
「1つは俺が小鳥ちゃんを好きなこと。まぁこっちはスルーしてくれて問題ない。重要なのは次、――真壁の母親の話」
「お母さん?」
「マジでスルーか」
だってあんまり立て続けに言うから。お母さんが出てくるとは思ってなかったし。
「ご、ごめんなさい……そっちはあとで聞く」
私はとりあえず涙を自分で拭ってお母さんの話に備えた。そういえばまだ私、郎太のこと何にも知らなくて、家庭環境とか、そういうの考えてみたこともない。
私なんかは普通の家庭育ちの普通の庶民だけど、郎太がどうかは知らないんだ。