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あたかも普通の恋愛小説
第12章 奈落、注意報
「……まいったな。」
私が泣いてばかりいるからか、隣で井藤くんは溜め息をついた。
「泣いてほしくなくて、どうにかしてやりたいのに。まだ何も言う前から泣かれたら、まったくどうしていいやら」
自分に浸ってばかりいた私は、ゆっくり顔をあげて井藤くんを見た。
井藤くんは私が知らない何かを知ってる。それは私にとって良くない何かの情報。
「――…」
それは何?私にはわからない何か。井藤くんは言いたくなくて、私もきっと聞きたくない。でも先伸ばしにしても回避が出来ないことだと井藤くんは思って、だから私に、何かを伝えたいんでしょ…――?
「どうして私と郎太の同棲に反対なの…?」
聞きたくない。一日でも長く幸せでいたい。だけど。知らずにいるのが幸せなのか、知った上でどうにかするのが幸せなのかは、知らないままではわからない。
だから。
――私は逃げない。
足が震えた。