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あたかも普通の恋愛小説
第14章 一分一秒
「ほんとに…どうしたの、郎太」
頭をある程度拭き終わり、雨ですっかり濡れた上着を脱がせてハンガーに吊るした。中のシャツも襟元が湿っていたからボタンに手をかけたら郎太が無言のまま私の手首を掴んでとめる。
何か。大事な話でもあるのか私は固唾を飲んで郎太を見守った。
郎太、怒ってるのかな。何だか雰囲気が恐いな。そう思ったとき、郎太は心配そうに見上げていた私を一瞬睨んだ。でも目があったのはその一瞬だけ。すぐに苦しげに目をそらす郎太にますます心配になる。
「――郎、」
口を開こうとした瞬間。耳をつんざく音。布が裂ける嫌な音に驚いて目を見開くと、郎太の目が冷ややかに揺れて私をベッドに押し倒した。