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あたかも普通の恋愛小説
第5章 黒歴史の扉


でも当時の私はまだそんなこと知らなくて、だからきっと隙だらけだったんだと思う。

部活でたまたま片付け当番が重なって二人きりになったなんて嘘、他の後輩たちが帰り際私の彼氏に頑張れよなんて言っていたのは最初から仕組まれていた証拠。私だけ知らなくて皆知ってた。


突然抱きついてきた彼にびっくりしちゃって、でも先輩らしくしなきゃって頭の中はそれだけで。変に取り乱したり泣きわめいたりなんて出来ないと思った。大人ぶった。ほんとは嫌だったのに、ほんとは恐かったのに、何でもないふうを装った。


付き合うってそういうこと。だから先輩も私をホテルに連れ込んだ。あぁ、だったら私、先輩に抱かれておけば良かったな。

――そんな後悔をしながら年下の彼に無理矢理抱かれた。

痛くて苦しくて、でも強がった。こんなの何でもないって自分に言い聞かせた。


何かが壊れた。


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