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大地の恋
第2章 若葉の頃
「鞠華さんは先生に会うことに抵抗はなかったんですか?」


「……今はね」


「………」


「今だから言えるけど私バッサリ振られたのね、真優ちゃんとケーキ食べた少し前に」


「そうだったんですか……」


ここで胸を痛める私は思い上がりも甚だしいだろうか。


「彼は私の中で特別だったから思った以上に忘れられなかったけど…ニューヨークに行ってからかしらね、そんな自分が急に馬鹿馬鹿しく思えて」


「今彼氏はいるんですか?」


「最近気づいたんだけど私、恋愛には向いてないみたい。私、自分が好きなのね。あと何よりダンスが好き……だから男は必要ないんだと思う」


「………」


「あー、でもシタくなるときは困るわね」


「鞠華さん…」


どこまでもサバサバした人だ。


「でも私にとって男ってそれだけの価値なのよ」


ふっと伏せた睫毛の影は相変わらず色っぽくてドキッとした。


「男と女ってギブアンドテイクでしょ?原始の頃から何らかの形で支え合って生きてきたじゃない。でも…私は支えて欲しいけど相手を支えるキャパはないの。我儘でしょ?」


「………」


「恭也、いい顔になったわ…やっぱり守るべきものがあると男は違うのかしら」


「そう…ですかね」


「真優ちゃんだってそうよ。真優ちゃんだけじゃなくて理穂もだけど…今大切なものがあるから過去は過去になるんじゃないかしら」


「過去は過去……」


深い話だと思いながら噛みしめる。


「真優ちゃんは恭也と私たちが会うと嫌?」


「それが不思議と嫌じゃないです」


「…元カレくんとどうして別れたかは知らないけど彼の中でも完結してればまた新しい関係が築けると思うけど」


「………」


「でもそうなった時、恭也は妬くかもね。真優ちゃんみたいに心広くないわよきっと」


「ええっ?」



二人で笑っていると桃が起きる。


「あ、起きたみたい」


お腹が空いて顔をくしゃくしゃにして泣く桃を見て鞠華さんが笑った。


「お兄ちゃんとあまり似てないのね」


「そうですね、お義母さんもよく言うけどあの子は先生の生き写しみたいでしょ?」


「いいじゃない、父親が分かりやすくて」


おむつを換えておっぱいを飲ませると桃は途端におとなしくなる。






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