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第4章 再会

真優と付き合う前に一度だけ怪しい雰囲気になったことがあった。
真優の疑問につけ込んで流れに乗ろうとした俺をギリギリで真優は止めて…


千花ちゃんみたいなことを言ったんだ。



「…何で笑ってるんですか」


「いや…ごめん、昔の事思い出して 」


今思えばあの時、真優が言った「本当に好きな人 」はアイツだったんだろう。
そしていつの間にか俺は、キスもセックスも本当に好きじゃない人ともできるような大人になっていた。



千花ちゃんは何とも言えない微妙な顔で俺を見ている。
林との間にそんな出来事があったと知った今、この子が俺をわざわざ待っていた理由は一つなのだと思った。



「千花ちゃんさ、俺の事好きだろ」


千花ちゃんが止まった。
この理由の他に全ての辻褄は合わないのだ。


「………はい」


あまりにも呆気なく千花ちゃんが認めてしまったので苦笑いするしかない。


「……そうか」



認めてなんかくれなければ良かったのに。
俺は千花ちゃんが可愛い。
妹のようにも友達のようにも思っていて、大切な子に代わりはないから。



でも……



「千花ちゃん…」


「はい」


「俺なんかやめろ」



綺麗すぎる千花ちゃんに俺は相応しくない。
千花ちゃんはただ俺の顔をじっと見ている。



「……どうして？」


「どうしても」



沙映子から始まった過去が走馬灯のように流れていた。
この子と付き合ったら俺はきっといつか千花ちゃんを泣かす。


……後悔はもうしたくないと思っている。
千花ちゃんは俺なんかと付き合っちゃダメだ。



それは精一杯の俺なりの誠意のつもりだった。
大切な千花ちゃんに対して俺ができる最大限の事が「拒絶」だった。


「別に付き合ってほしいとか…」


「でもダメだ。…今は良くてもいつか必ず欲が出てくる…今ならまだ間に合うだろ？」


「間に合うって？」


「俺なんか忘れて他の男に目を向けろ」


「………」


千花ちゃんは傷ついた顔をしている。
当たり前だろう、結構酷いことを言っているのだから。