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大地の恋
第4章 再会
「林と何かあった?」


「………」



アタリか。



「告白でもされたか」


「…キスされました」


「また積極的だな」


「………」


「…キスくらいで済んで良かったんじゃねーの?」


大人の俺たちにとってキスは「くらい」なのだろうか。
でも今の俺には千花ちゃんに掛けられる言葉は正直これしか見当たらない。


「キスくらい…ですか?」


「キスなんて挨拶みたいなもんだろ」


“気にするな、でもこれからは気を付けろよ”ということが要は言いたかったわけなのだが。


「……板橋さんにとってはキスって“くらい”なんですか」


「俺にとっては…っていうか事故みたいなもんなんだから…」


「大したことじゃないって?」


「そうとは言わねーけど」


「…そうですか。でも私もキス“くらい”で済んでよかったと思うことにします」


刺々しい千花ちゃんは初めてだった。


「そう思うしかねーだろ…やっちまったことなんて消せないんだから」


「………」



「キスの一回くらい自分の中でなかったことにしろ、…で、次から」


隙を見せないようにするんだな、そう続けようと思っていたら。


「…そう…ですよね、キスの一回くらい……」


「………」


まさか…とは思う。思うけど……


「もしかして初めて・・・?」



「………」


「えっ、マジで!?」



驚く俺に千花ちゃんは涙を溜めて怒った。


「そうですよ!悪いですか!?キモいですか!?」


「だから…そうとは言ってないって」


「そういうのは本当に好きな人と…って思ってたら機会がなかったんですもん仕方ないじゃないですか!」


「…そんなに大事にしてたモン林に奪われてたら世話ねーな」


「その言い方……板橋さんに聞いてもらおうと思った私が馬鹿でした」



不貞腐れて“さようなら”と頭を下げる千花ちゃんの首根っこを慌てて掴むと千花ちゃんは眉間にシワを寄せる。



「離してください!」


「いや、…つーか悪かった、マジで」


「………」


「俺は千花ちゃんみたいな考えの子の方が好きだよ」



千花ちゃんに言いながら遠い昔、真優に言われたことを思い出してしまう。
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