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Deep Emotion
第5章 最低
「行ってきます」

「あっ、えっと行ってらっしゃい」

朝8時。門倉さんが家を出ようとするので、私は慌てて玄関に向かった。

「今日も、遅くなるから」

「わ、わかりました」

だめだ、顔が熱い。

門倉さんが朝食を摂っている間も、なんだかすごく緊張してしまって、気まずい雰囲気だった。

なのに、門倉さんは普通にしているし、なんだか私ばっかりが意識しているみたい。

ふと、私の頭に門倉さんがぽん、と手を置いた。

「困らせてごめん。…言ったことは本当のことだけど、返事を急いでいるわけじゃないから。ゆっくり考えて」

門倉さんの手が優しく私の頭を撫でる。


ずるい、そんな優しい言い方。


私は頷くしかなかった。

門倉さんは頭から手を離し、家を出た。

…洗い物でも、しようかな。

キッチンに向かおうとすると、陽くんが起きてきた。

「おはよー、澪」

「あ…。陽くん、おはよ。今日は大学行くの早いの?」

「あー、昼ぐらいに出る。昼飯、あっちで食べるから作んなくていいよ」

欠伸をしながら、陽くんは浴室へ向かった。眠気覚ましにシャワーを浴びるのだろう。

洗い物を済ませ、リビングに無造作に置かれていた新聞を片付けようとしていると、陽くんがシャワーを終えてきた。

上半身は何も着ておらず、スウェットの下を穿いているだけ。初めは目のやり場に困ったけど、毎日のことなので慣れた。

「そう言えば澪さあ」

陽くんが、私を見つめて妖しい笑みを浮かべた。
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