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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る



 ナスタチウムは鮮やかなオレンジ色の花びらを開かせ、凛としている。アリエッタがこの日この花を選んだのは偶然か、それとも必然か。


 ──花言葉は『困難に打ち勝つ』。


 アリエッタもまた困難に打ち勝ちたかったのかもしれない。


 筆を取っているときには集中をしているアリエッタであるが、今日ばかりはそうでない。幾度目かの溜め息を拾い上げたのは例の如く訪れたレオであった。


「悩み事でもあるのか?」


「レオ様……」


 度々あるレオの突然の出現はアリエッタに免疫をもたらし、さほど驚くこともなくアリエッタは立ち上がった。


「いいえ、そんなことはありません」


「そうは見えなかったが? とりあえずこっちでお茶しよう」


 最終的にはレオの言葉に従ってしまうのを学んだアリエッタは断るのを諦め、大人しくついていく。


 ポットの中で茶葉が蒸らし終わるのを待ち、アリエッタはカップにアップルティーを注いだ。








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