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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



『まずは謝罪から申し上げなくてはなりません。これまでたくさん良くしてくださったのに、こんな手紙一枚残し、仕事を放棄し邸を出るご無礼、本当に申し訳ありません』


 ここまで読み、レオは文字から眼を離す。出だしから混乱した。


 手紙を見付けた時点で、アリエッタは自らの意志で邸を出たとは予想はしていた。


 だが仕事とは……? 教育係のことであろうか。しかしこのところ、教育係という言葉は使ってこなかった。


 あれはアリエッタに触れる建前だ。もう想いが通じ合ったのだから必要ない。


 いくら考えても解らず、再び読み進めることにした。


『この邸に来てから、私は今まで味わったことのない幸福に満たされたわ。


 人を愛する喜びや、かけがえのない人たちとの出逢い。


 温かなベッドや食事、初めて見る景色や家族との絆まで取り戻せた。


 あなたにはどれだけ感謝しても、きっと足りないわ』


 読みながら、永遠の別れのような言葉に胸が締め付けられた。





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