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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



 レオは暫く封を開けるでもなく、ただ手の中にある封筒を見詰める。


 開けたら最後。この世が終わってしまう気さえするのだ。


 馬の上で揺られながら、繰り返しアリエッタの無事と居なくなった疑問が渦巻いていた。


 それを紐解く鍵がこの中に詰まっている。確証に近かった。


 封筒は糊付けされていない。手間をかけさせまいとするアリエッタの気遣いだ。だがそんな気遣いはいらない。


 アリエッタさえ無事に戻ってきてくれれば、なにもいらないのに。


 意を決して封筒から丁寧に折り畳まれた紙を取り出す。


 薄くインクが滲んでいる。


 早く読めと警鐘が鳴るのに、読みたくないと反発する警鐘も鳴る。


 打ち勝ったのは読めと鳴ったほうだった。


 微かに震える手で紙を開いた。


 綴られている文字はアリエッタらしい几帳面で綺麗なもの。


 レオは眉をひそめ、文字を追った。







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