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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る


 レオの出した条件とは第1に完成した絵をレオに渡すこと。


 その条件に対し、ギルデロイの個展が終わってからならとアリエッタは了承した。


 問題は第2の条件──慇懃〈インギン〉な口調と敬称を禁じる、というものだ。


 肌に触れられるより簡単な条件に思えるが、染み付いた習慣というのはなかなか抜けないものだ。


 通常、目下の者が目上の者に対し、砕けた口調や敬称を付けずに話すことなんてない。そのうえアリエッタのこの性格だ。禁じられていてもすぐ変えられるわけがない。


 しかしなんでもやると言い出したのはアリエッタだ。条件変更を申し出られるわけもなく、これにも了承した。


 ただそのときの台詞が良くなかった。


『それだけでいいんでしょうか?』と言ってしまった。


 もっと無理難題を言われる覚悟は多少なりともしていて。下僕のよう、使いっぱしりなどをさせられるのではと考えていた。


 するとレオは「だったら破ったときはペナルティーとしてキスをする」と言い出した。


 アリエッタも条件を反古にするのだから、自分も触れないという約束を反古していい、という彼の理論かららしい。










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