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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る


 無茶苦茶な理論だわ──と思ったのも束の間。ベンチに座すレオを描きだしてしまえば、彼との会話や周りの景色さえ霞んでいく。


 圧倒的な存在感を放つレオの色彩や容姿が脳裏に──いや、視覚からアリエッタの細胞に入り込み、余すところなく刻まれていく。


 滑らかな肌の質感、朝陽に煌めく絹のような繊細な髪、綺麗な弧を描く二重の瞳に羨望を抱くほどの高く通った鼻梁、笑みを作ってないのに上がる口角。


 男らしい首筋や喉仏、肩幅も狭すぎず広すぎず、手足はすらりと長い。完璧な均整をとっている彼は稀代の彫刻家が削り出したどの彫刻よりも人々を魅了するだろう。


 アリエッタは多角からレオを描き、手元は休むことなく動いている。


 その間レオは僅かに身じろぎする程度でじっと座り、真剣な眼差しを送るアリエッタに時おり視線を返しはしたが、交わることはなかった。





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