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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



 それはさておき、とレオは書類を公爵との間に置かれる机に滑らせる。


「なんだこれは……?」


「最近、闇で活動する人身売買の組織を摘発する機会がありまして。そのいくつかと繋がるある人物の名が挙がってきました」


 公爵の顔色が赤から青へと変わる。


 彼は狡猾であるのに詰めが甘い。昔からそうだった。もっと上手くやれていれば前公爵と確執も持たなかったであろうし、アリエッタを隠し通せていたはずだ。


 傲慢で矜持ばかり高く、どこから沸いているのか自信家だ。故に詰めが甘くなるのだ。


「今さら隠しだてしようが、取り繕おうが逃げ場はありませんよ。証拠は揃ってます」


「私は知らんぞ! 誰かが私の名を騙ってやったのだ!」


 レオはこれみよがしに嘆息してみせる。


「あなたが今すべきことは、すぐに首都を離れ、生涯身を隠すことですよ」


 冷たく突き放し、レオは眼を眇た。




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