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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



「お分かりですよね? 我が国で人身売買は極刑に値します。しかし私もアリエッタの父親を手にはかけたくありません。これは最大限の慈悲です」


 公爵が人身売買に関わっていると知ったとき、王太子の立場と彼女を愛する気持ちとでせめぎあった。


 しかし結局はアリエッタを優先させてしまった。憎らしく思い、罪に穢れた男であろうとも、彼女の父親にはかわりない。


 怒りも爆発寸前だ。罵倒し、アリエッタ以上の苦しみを味あわせてやりたい。だが極刑に処されたと彼女が知ったときの深い哀しみを思うと、立場を危うくしても逃がす選択をしてしまったのだ。


「爵位は奥方に返還し、離縁の手続きも進んでおります。あとのことはご心配なさらず。どこへなりともお行きください」


「殿下……! なんとか……なんとかなりませんか!?」


「言ったはずです。これが最大限の慈悲だと。一応申しておきますが、邸の物は持ち出さないでください。あなたが受け取るべき財産は一切ありません。ここを出たら邸へは戻らず、首都を離れることだけ考えてください。……ではお元気で」


 縋りつこうとする彼を振り払い、レオは先立って部屋を後にした。






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