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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに



「愛しているのね、今も」


 穏やかに問われ、アリエッタは逡巡するも頷く。


 ここは神聖な礼拝堂だ。神を模した聖体がアリエッタを見下ろしている。


 どんな事情があろうとも、嘘偽りは赦されない。


 シスターになろうとしている身でありながら、想う男性がいるとはと叱責されようとも、だ。


 しかしマザーは穏やかに微笑む。


「そう、良かったわ。アリエッタの返答次第では、あの方がどんな身分でも追い返そうと思っていたのよ」


「追い返すって……?」


 アリエッタが首を傾げたとほぼ同時。コツ……コツと靴音が鳴る。アリエッタは礼拝に来た者がいるのかと何気なく振り返ったが、その人物を認めた途端、息が止まりそうになった。


「あらあら、困ったわね。外でお待ちいただくようにお願いしてあったのに。待ちきれなかったようね」


 クスクスと笑うマザーの声が通り抜けていく。


 アリエッタの肩にトンと微かに叩くと、その人物と擦れ違って出ていく。


 アリエッタもまたよろよろと立ち上がり、瞠目した。






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