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第10章 依頼人　高橋　美樹

「おじさま　ごきげんよう」

美樹は東京電気の常務室の扉を開けた。

「やあ　美樹ちゃん。

　久しぶりだね」

常務は脂っこい満面の笑顔で美樹に向かって両手を広げ強く美樹をバグした。

美樹は吐き気を覚えたがこの際我慢することにした。

親族のなかでも一、二を争うくらいこの叔父が嫌いだった。美樹が中学生の頃にはこの叔父に迫られたこともある。

吐き気を堪えながら美樹は叔父を抱き締め返した。

叔父は美樹を放そうとしなかったが美樹が叔父の胸を意思を込めて押した。

「どうしたんだ急に。

　まあ、座りなさい」

叔父は笑顔を湛えながら美樹にソファーを勧めた。

「今日は叔父様にお願いがあって参りましたの」

美樹はいずまいをただし叔父に向き直った。

「お願い？」

叔父はテーブルにあるタバコに手を伸ばした。