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浮気断定社
第10章 依頼人 高橋 美樹
「おーい みんな
 高橋課長の奥さまが差し入れに来てくださったぞ」

その声にフロアで働く人が飯田の方を向いた。

人の流れが入口へと動き
美樹は社員たちに囲まれた。

美人で常務の縁続きの美樹に愛想を振り撒かない男はいない。
美樹はまんざらでもない様子で微笑みを湛えていたが
鋭い眼差しは女子社員を吟味していた。

「なにあれ?
 課長がいるわけでもないのに差し入れなんて
 何が魂胆あるに決まってるわよ」

瑠璃のとなりに座る恭子が耳打ちしてきた。

瑠璃は黙って美樹を見つめていた。

美樹は菓子箱を手にフロアを歩き回っている。

「課長、また浮気してるんだ
 奥さん出てくるってよっぽどだわ。

 あーあ、浮気相手の人生終わったね。
 お気の毒」

恭子は小さく呟いてパソコンに向き直った。

瑠璃は美樹から目が離せなかったが
もう終わったことだと自分に言い聞かせて業務に戻った。

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