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第10章 依頼人　高橋　美樹

瑠璃の日常は穏やかな時間へと変わっていった。

朝夕の送り迎えが付いたことは時には窮屈に感じることもあるが、それも自分のためにわざわざやってくれていると思うと申し訳なかった。
時には幼稚園へ向かう子供たちと同じ車で賑やかに出勤する。

会社の最寄り駅で下ろしてもらい
何も変わっていない顔で出勤する。

本当は会社を辞めたかったが何度辞表を提出しても先伸ばしにされた。

高橋と別れるには環境を変えるのが一番いい。

でも瑠璃は心のどこかで高橋と繋がっていられることが嬉しかった。
時折海外から連絡が来る高橋の電話を取る度、愛しさが込み上げて強く受話器を握るが、それを表に出すことが出来ない悲しさに襲われた。