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第10章 依頼人　高橋　美樹

木枯らしが身に染みる季節になってきた。

街はクリスマスムードで盛り上がりを見せている。

瑠璃はそんな街並みを横目に見ながら平常な日々を送っていた。

フロアの入口のざわめきに目を凝らすと


高橋が立っていた。

数ヵ月ぶりに見た高橋は真っ黒く日焼けして
少し痩せた体はどこか影を漂わせている。

一目見たその姿に瑠璃は胸を締め付けられた。


ーやっぱり

　好き...

瑠璃は高橋に気付かれないようパソコンに向き合う。

フロアの社員たちが近寄るなか
瑠璃は不自然なほど自分の存在を消す。

高橋が自分に近寄らずに去ってくれることだけを祈って。