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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
 

「しーちゃん? どうしたの、悲しそうな顔をして」


 突如、長い睫毛に縁取られたアーモンド型の目があたしを覗き込んでくる。


 おいしそうなココア色の瞳。

 ふわふわと甘いミルクティー色の髪が風に揺れている。

 
「え、あ……ええとここ……」

「僕の大学の停留所前。しーちゃん、バス降りよ?」


 あの病室にはナツの着替えがあるらしく、ナツは一足早すぎる夏のバカンスの出で立ちから、爽やか初夏の王子様の服装になった。


 淡い紫色のカットソーに細身のジーパン。

 シンプルなのに、色気を見せる長身の王子様。

 さすがは現役有名ブランドのモデル。


 そのモデルは終始あたしに甘やかな笑顔を見せて、あたしと指を絡ませあう……いわゆる恋人握り。たまにその手を口元まで引き揚げて、ちゅっちゅと啄む様なキスを落として、妖しげな流し目を向ける。

 病室でナツのセクハラと紙一重の腰のマッサージを受け、なんとかのろのろ歩けるようになったものの、白昼堂々としたフェロモンに即KOして崩れ落ちそうになる。

 すると腰をいたわるようにみせながらも、後ろから白いワンピースの下に潜り、尻を割ってその先まで滑りそうな予兆を見せる手の動きに、ひぃっと悲鳴を上げて慌てて体勢を立て直す……その繰り返し。


 法学部の学生が公然としたわいせつ罪。

 これは由々しき事態ですと周囲の反応を窺えば、突き刺さる憎悪の視線。

 わいせつ罪より、殺人罪の方が恐いです……。


 殺人予備軍になりつつあるのは、色っぽいお姉様と、一部お兄様。

 ……おじさまやおばさままでいる。

 ええ!? なんでワンコやニャンコまで!? まさかこのありんこもか!?


 とりあえずこの手だけでも離した方が……。


「なんで手、離そうとするの? 僕達、あんなことまでした仲なのに」


 そう妖艶に微笑みながら、人差し指であたしの唇に触れる。


「気持ちよかったね。また……しよ?」


 とろりとしたその目を、妖しげに瞬かせる。


 ……大都大学、正門の真ん前で。
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