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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
 

 ナツは、蜜をたっぷりかけたようなとろりとした瞳を開いて、小さく囁いた。その顔は上気して、色っぽい。


「しーちゃん、3秒でコロコロして僕に戻して」


 靄がかる意識の中で、再びナツとの距離はゼロになる。

 唇を割ったナツの舌があたしの口腔に伝え入れたのは、なにかの固まり。


 最初こそ甘く感じられたが、次第に甘さは引く。

 無味になっていく。


「沖縄で売ってたウイスキーボンボン。きちんと波瑠兄の許可もとった、チョコの方がやけに硬くて厚い……アルコール超微量の奴。こんなチョコチョコしてるものでも、甘く思えないんだね。だけど……んっ……」


 ナツが触れあった唇から舌で奪い取ったチョコは、またあたしの口の中に戻された瞬間に、酷い甘さを持つ。


「どう? 僕の唾液にくるんだチョコは?」

「甘い……」


 チョコの甘さも感じなくなったあたしの味覚は、ナツの唾液がコーティングされると甘く感じるらしい。


 コロコロ、コロコロ。


 おいしい……。

 舌で転がし、甘さを噛みしめると自然に顔が綻んでくる。


「ナツ、甘くておいしい……」


「……~っ、その顔……たまらない」


 最初こそ妖しげな微笑みを見せて、コロコロと舌で転がして味わうあたしを見ていたナツだが、次第に切実な表情に変わる。

 机を滑るようにして下からあたしを見上げると、半開きの唇であたしを誘い、片手であたしの頭を引き下げ……触れた唇から舌を捻り込ませる。

 
 ナツの舌がいやらしくあたしの舌や口腔内に絡みつき、直接ナツの唾液が絡んだ甘すぎるチョコは、どちら側に所有されているとは言えないまま、ふたり分の熱さに溶けていく。



「しーちゃん。もう僕に戻して。ん……ふ……ぅっ、そう……イイ子。ん……しーちゃんの味で、甘い……んっ……また、上げる」 


 口の中にあったチョコはナツに奪われ、そしてまたあたしに戻され……繰り返される甘いキス。


 甘いのはチョコではない、ナツだ。

 ナツが甘すぎるのだ。



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