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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 なんでそこまでカレーに拘るのかわからない。

 昼間カレーでも食べて、嫌なことでもあったのだろうか。


「ハル兄、そんなにカレーの匂いが気になるのなら、あたしも真面目に嗅いでみるから」


 カレーの匂いがしないとわかることで、少しでも狭量になっているハル兄の心に負担要因のひとつになっている憂いをなくせるのなら。


「違ぇよ、そんなこと誰も頼んじゃ……おい、シズっ! くんくん嗅ぐなっ! ナイーブになっている俺の体をっ!」

「だってハル兄、気にしてるんでしょう? だったらカレーの臭いがするか、あたしも本気になる。本気でしなかったら、それはしてなかったということで納得してよね。ちょっと失礼」

 あたしはハル兄の白衣を広げて、黒いブラウスの上から体臭を嗅いだ。オスの香りにくらくらしながら、少しボタンを外して嗅いでみたが、カレーの匂いは皆無だ。


「うん、カレー臭はしない。安心して? このハル兄の匂いは、オトコって感じで……」


 あたしは目線だけを帝王に向けた。


「あたし好きだよ?」


 ……この発言、匂いフェチの変態さんじみているだろうか。

 そう思ったら、恥ずかしくなってしまい、ぽっと顔を赤らめてしまった。


「……っ!!」


 突如、ハル兄の切れ長の目が見開き、全身を固まらせたから、あたしは驚いてハル兄の上で身じろぎした。


 その時、あたしの足が、ハル兄の股間に触れた。


「……おや?」


 今までなかった感触。

 そこには大層な硬さも大きさもないけれど、明らかに今までにはない軽微ながらも、ちゃんとした反応がある。


 ……あれ、末期症状脱却?


 きょとんとした顔を向けると、ハル兄は片手で顔を隠していた。


「深刻さを治すのは単純……あのヤブ医者の見立て通りってことか」


 なにか呟くハル兄は今、どんな表情をしているのかわからない。


 嫌悪ではないだろう。

 なにがきっかけかはわからないが、明るい兆しが見えてきたハル兄事情。

 これでやっとハル兄は元気になれる。


「――シズ」


 手が外されたその顔は、いつもの帝王らしく超然としていて。


 
「俺様のイチモツの命運は、お前にかかってる」



――多分しーちゃんなら解決出来ると思うよ。



 あたしは、重大な任務を負ったようです。

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