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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
――今日はね、非公式のパーティーがあるの。本当はニャン吉と出るつもりだったけれど、お詫びとお近づきの印に、あの卑猥な男と行ってきて。
渡されたのは、ご招待券。
――ただ、正装が条件だから……よし、シズルちゃんは私に任せて。
あたしはそれから、夕子さんに連れられて、美容室やらエステやら……ホテルの中にあるあらゆる美容施設にたらい回しにされた。
――私ね、一人っ子だし。肩書きが大きい割にはがさつの性格だから、女の友達いなかったの。だからよかったら友達になってね。
パーティーには出ない夕子さんも一緒に付き合ってくれて、あたしは12年ぶりに"女友達"と呼べる同性との交流を楽しんだ。
あたしの親友、あのクソメガネの姉のユリとはいまだ携帯がつながらない。いつか家に押しかけようとは思えど、完全にタイミングを逃しているあたしだから、余計同性の友達が出来たのは嬉しかった。
そうだ。今度ユリにも紹介しよう。上流界の中にいて、元ヤンの過去を持ち、時折その片鱗を見せる女なんて、ユリは大喜びしてはしゃぎそうだ。
エステで寝転びながら、夕子さんから恋バナを聞く。
36歳モテモテ医者……しかも女好きが相手だと、不安で仕方が無いらしい。こんなに美人で男が言い寄ってきそうな夕子さんも、一途に恋する乙女。
確かに女癖は悪そうだけれど、ニャン吉は夕子さんにべた惚れな気がする。どんなに女と遊んでも、絶対夕子さん以上にはならない気がする。
それを言うと、夕子さんは嬉しいとすすり泣いた。
――シズルちゃんは、36歳の相手をどう思う? 私のパパのように、おじさんはやめろとか周りから反対されない?
あたしはハル兄の恋人ではないが、佐伯のおばさまの口振りでは、反対どころか逆に勧められた。ナツほどにないにしても。
あたしのパパとママが生きていて、もしハル兄をあたしの恋人で結婚したいと言ったら、どう言うだろう。
"よかったわね"
そう言いそうな気がする。
あたしの周りには、あたし本人含めて、ハル兄の歳を気にする者はいない。気にする要素すらあたしにはない。ハル兄はハル兄だ。
そうか36歳って微妙なお年頃なんだ。
だからハル兄も、時折その年齢持ち出していじけることがあるんだ。
……なに気にするんだろ。