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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2



 そして時刻は、夕方七時――。


 お腹が減って仕方が無い。

 しかしレンタル衣装で借りたドレスの胸回りが小さめのため、満腹食べてぷたんとボタンがはちきれたら困る。


 あたしが着たのは、黒地に赤い大きな花模様が入った、ロングスリットドレスだった。両肩や足を出せるのは、ひとえにエステマジック効果だ。いつもならこんな大胆なデザイン、絶対腰が引けるだろうが、エステをした今日だけは、人にさらけ出しても許される気がするのだ。


 なにやら夕子さんがスマホで誰かと連絡を取り合った直後、やけにこれを推薦し、店員さんも褒めてくれたし、自分でも大人っぽいのに挑戦しようと思っていたから、衣装はすぐきまった。

 髪型はサイドと後ろに巻いた髪を垂らし、緩く編み込んだようなまとめ髪。化粧もして貰い、童顔もそれなりに大人びて見えるようになった。

 ナツや委員長に見せたら、あたしだってわかるかな。

 一応写メだけは撮った。今度自慢しなきゃ。


「ん。時間もいいタイミング。では……」


 笑顔の夕子さんが、耳もとで囁いた。


「きっと今夜は凄いわよ。ED祝脱却記念に、これ渡して」


 小さな巾着袋だ。


「ふふふ、勿論シズルちゃんが食べてもいいものよ?」


 なんだろう、お菓子だろうか。


 完全に恋人と思われているあたしとハル兄。

 ハル兄もあたしと体の関係があるということを隠さなかったし、あたしも否定しなかった。まぁ否定しても、ハル兄が強行するだろうけれど。


 しかし、こんな格好ひとつでハル兄のEDが回復するわけない。

 今朝まで回復出来なかったのだ。


 それにハル兄も体力温存したいと言っていたんだし、口では発射云々言っていてもあれはきっと、売り言葉に買い言葉。


 まぁだけど……、綺麗な格好させて貰えたのだし、今日は楽しもう。


 そう思い、待ち合わせしていたロビーに夕子さんと立っていれば、ハル兄とニャン吉がやってきた。


「!!!!」



 まさか帝王様も、正装にお着替えだとは思わなかった。


 憂いを帯びた切れ長の目が、驚くあたしと視線を合わせ、タバコを吸っている苦悶の顔が、ふっと甘やかに緩んだ。
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