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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。

  



 あれから2日が経つ。


 最後の最後まで、あたしと一緒にバカンスに行きたいと、およそ仕事という立場を忘れたナツが散々と駄々をこね続けた。

 加勢して欲しいのに、ハル兄は欠伸をしながら途中退室してしまい、ふたりきりになった途端に、ナツは妖艶なオトコの顔をして誘ってくる。


――しーちゃんと、いつでも愛し合いたい。沖縄でも、今ここでも。


 そこにはあのしくしく坊やの顔はなく。あれでも兄の前ではセーブしていたのかな、しかしどこまで元気なんだこの子は……色々思いながら、ナツの誘いには乗れなかった。

 やはりあのホテル内での渇望は、酒の効果が大きかったのか、恥じらいと常識が先行してしまう。

 だがナツの挑発的な眼差しはかなりのもので、肉食獣に食らわれる小動物のようにぶるぶると震えてしまったあたしは、

――しーちゃん。2泊3日沖縄行くのと、僕が帰ってきてから1泊の温泉旅行行くのとどちらがいい? 特別に選ばせてあげる。

 急に提示された二択。数で選んでしまったのだ。……少ない方を。


――ふふふ、しーちゃん、温泉好きなんだね。じゃ、や・く・そ・く。


 気づけば小指を絡ませあって約束しており、あたしは今一体なにを……と正常心が戻った時にはもう遅い。にんまり顔のナツはだてに大都大現役合格していないらしく、すべてはナツの思惑通り。
  
 さらには貪欲なナツは、たたみかける。


――しーちゃん、僕お仕事が不安なんだ。だけどしーちゃんの下のお口で愛を貰ったら、僕思いきりお仕事頑張れる気がする。ねぇ、僕を応援して? 僕に力をちょうだい? 


 偏執的に、下のお口に拘るナツ。情欲だけとは言い切れない、切実なものを感じたあたしに、抱きついてきたナツがため息混じりに小さく呟いた。


――僕のものっていう、証が欲しい……。僕はもう……大人になったんだ。ただ見ているだけしか出来なかった、子供じゃないんだ……。


 あたしの元カレに"呪"を送っていたナツ。邪険にしても執拗に擦り寄ってきたナツ。あたしと手を繋ぐと泣きそうなくらいに悦んでいたナツ……。


 12年前のハナタレデブのストーカー行為を、あたしは散々に疎んできたけれど、もしも……彼が真剣だったのなら……。


――放したくないよ、しーちゃん。繋ぎ止めたいんだ……。


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